島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第16回(最終回)「おいしい転調」について

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。サカウエです。

さて耳コピに役立つ知識を1年以上にわたりご紹介してまいりましたが、前回の記事から半年も間を空けての登場が最終階で恐縮です(泣)

このコーナーが、ほんのわずかでも皆様の耳コピ・ライフの手助けになっていれば望外の幸せです。

というわけで最終階のお題は「転調」です。

転調は「調」が変わるということですが「調」については耳コピ連載第7回でもご紹介しております。詳しくはコチラもご覧ください:

そもそも転調とは

転調は英語では“Modulation”と言いますが、その名の通り曲の調(キー)が転ずる(変わる)ということです。

ハ長調だったら中心となる音(主音)はハ(ド)=C音ということですが、たった一つの調だけで進行するのではなく随所で転調することで楽曲に変化をつけて様々な表現を生み出すことができるわけです。

最近のJ-POPはもとより、ポピュラー音楽では転調は当たり前の様に使われていて・・むしろ転調のない曲のほうが珍しいかもしれません。

主音は目的地?

主音について少々触れておきます。

たとえばこれ、ショパンの有名な前奏曲ですが、キーはホ短調(Em)=シャープ1コ

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いかがですか、終わりそうで終わらない・・そして紆余曲折を経て、すべてがラストのトニックEmにむけて収斂していくといったストーリーが感じられるかと思います。

この紆余曲折の部分こそが転調を始めとする様々な技法によって構成されているわけですね。

とはいえすべての曲がトニックで終わるとは限りません。中にはややこしいことに、トニックが一度も出てこないなんて曲もありますが、今回はそーゆーのはあえてパスすることにします~

転調の種類について

転調には様々なバリエーションが存在しますが、「一時的に転調するもの」と「完全に曲のキーが変化するもの」に大別できると思います。

それぞれ「一時的転調」、「本格転調」などと呼ばれているようですね。

この曲は「本格転調」の例です

Carpenters - Sing
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未来永劫変わらぬ名作(元はセサミストリート挿入歌)ですが、この曲を聞いて

1:12 お子様合唱「お、雰囲気変わった~何が始まるの?」(期待感)
1:46 「なんだか感動的~」(高揚感)

・・・という印象を持ったとすると、アレンジャーの転調作戦は大成功ということです(^^)

ちなみにここではキーが何から何に変わったか(Eb ⇒ C ⇒ Eb )ということよりも、比較的シンプルな構成の曲が、転調で一層ドラマチックになったという「効果」を理解していただけたら幸いです。

いい忘れましたが74年のカーペンターズ東京公演では「ひばり児童合唱団」と共演しています・・

ドミナントモーションについて

「ドミナントモーション」は以前「起立ー礼ー着席」のコード進行でも紹介しましたが、非常に安定感のある進行で「一時的転調」「本格転調」のどちらでも使われます。

いきなり遠い(関連性の薄い)キーに転調する場合に「ドミナントモーション」を利用すると「無理やり感」をある程度緩和することができます。

たとえば先ほどの「Sing」でも、Cに転調する場合は「G7-C」、Ebに転調する場合は「Bb7-Eb」と直前にドミナント・コードを挟み込んでいます。

こうすることで「なんだか展開変わりそう~」と一瞬ですがリスナーに心の準備と、期待感を与えるわけですね。

「突然転調」について

「sing」の場合、ドミナントコードを使うことで「いきなり感」を緩和出来ましたが、なんの前触れもなくいきなり転調するパターンを「突然転調」と呼んだりします。これは一時的転調でも使われます。

Yesterday and Tomorrow / ゆず
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あまりワタクシらしくない選曲というのは自覚しております、大丈夫です。

最近は珍しくありませんが、イントロからメロに入る部分でいきなりのちゃぶ台返し・・・とでも申しましょうか・・・DからFに(#2コからフラット1コへ)唐突に転調していますね。びっくりしましたよ~

実は直前にFのドミナント「Csus-C7」が一瞬出て来るのですが、あまりに短時間なのでこれは「突然転調」分類としました。

さてお次。

エリック・クラプトン いとしのレイラ(Layla)
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正しくはクラプトンが在籍したデレク・アンド・ザ・ドミノスの曲。
超有名イントロフレーズ(Dm)から、Aメロボーカルはまさかの半音急降下(C#m)!

フラット1コからシャープ3つへ変身です(これはホント伏線も無いので予想外)。当時はこれ斬新でしたね~痺れましたね~


これも秀逸です⇒あのこはだレイラ by エリックかけブトン
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David Bowie/Pat Metheny - This Is Not America
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1:24から半音突然転調ですね。ボーカルは10年ぶりとなる新作『ザ・ネクスト・デイ』を3月に発表したデヴィッド・ボウイですw

メセニー先生はソロ部分などでいきなり「半音上転調」というパターンが多いです。ファンはよく知っているので、この場合は「来るぞ、来るぞー」という期待感の中、お約束通り転調して「気持ちいいい~」という少々ややこしい世界かもしれません。


このように「突然転調」は「ホントいきなり前触れもなく」転調するサプライズ。ただし新鮮に聞こえる一方、場合によってはリスナーの期待を裏切りストレスを感じさせてしまうこともあると思います。

また多用すると曲の輪郭、印象を散漫にしてしまう危険性もあるので「突然転調」を使用する際は細心の配慮が必要だと思います。

いったんまとめ

では「本格転調」のパターンをいったんまとめておきましょう(Cから転調すると考えて)。

下記のような近親調への転調は比較的穏やかな雰囲気になるかと思います。

同主調(Cm)、平行調(Am)、属調(G)、下属調(F)、etc

()内は転調後のキー

一方、#(シャープ)b(フラット)といった調号の数が大きく異なるキーへの転調は、過激な印象を与えます。

増四度(Gb)、半音上(Db)、半音下(B)、調三度上(E)、長三度下(Ab)、etc

これは元のキーと遠い(=関係が浅い)からですね。

Gbキーというのはbが6個もついちゃうんで見た目にもすごく変わります。いきなりこんな譜面渡されたら一瞬身構えちゃいそうですね~(泣)

さて、曲中で完全に曲のキーが変わる場合「どの部分」で「どのキー」に転調するか?ということが重要になると思いますが、これはあまりに千差万別。ここでワタクシがあーしろこーしろというのはいささか僭越すぎると存じますので、

比較的単調な曲で、繰り返しが多い場合は、後半転調にトライするのもありかもね・・・たぶん

・・という少々消極的な態度でお茶を濁すことにします。みなさんも色々な曲を聞いて研究してみてはいかがでしょうかー。

一時的転調の例

続いて一時的転調です。最初のショパンもそうですが、今では殆どの曲で使用されております。

一時的転調には様々なバリエーションが存在しますが、いくつか「オイシイ転調」の例をご紹介して行きたいと思います。


エルトンジョン / Goodbye Yellow Brick Road (1973)
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エルトン・ジョンは当時は奇抜なステージ衣装が印象的でしたが、今だったらレディー・ガガのさきがけみたいな人(インタビューで本人もそう言ってました)。もう40年前になりますが非常に感動的な曲です。

この曲のキーはF。

Aメロの部分、Ebというコードが出てきますが、これはノンダイアトニック、すなわち調が一時的に変わっているということです。


試聴 [file:shimamura-music:130116-MIMIC_16_tenchou_01.mp3:sound]

不自然に聞こえないのはEbの直前のコードBbがEbのドミナント(V)だからです。

サビの部分、ここでのAbへの転調が劇的な効果を生んでいると思います。


試聴 [file:shimamura-music:130116-MIMIC_16_tenchou_02.mp3:sound]

いかがでしょう、後半の非常に力強いメロディー・ラインが印象的な不朽の名作ですね。
(近年は1音下げ(Eb)で歌ってるようです)


AFTER THE LOVE IS(HAS) GONE / Earth,Wind & Fire
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Earth,Wind & Fireの79年の大ヒット、グラミー賞とりました。
コード理論などを説明する際に頻繁に例に挙げられる「おいしい転調」盛りだくさんの~まるで転調の教科書のような曲です。

さてさて、この曲のキーもFですが、

0:55、Fで落ち着いたと思ったら突如ガーンと「Amaj7(onB)」が鳴って「Emaj7」へ進行、一番遠いキーのBに「突如」転調しております。

・・少々強引ですが非常に新鮮な雰囲気ですね。

そして1:02の「Bmaj9」ロングトーンで黒鍵グリス(注※)、そのままトップノートD#(=Eb)を共通音として1:06秒で「Cm7」にチェーンジ!!

※黒鍵の音がそれぞれ「Bmaj7」の9th,3rd,5th,6th,major7thになるのです!!・・お手軽だけど結構効果的なワザ。

いやーこの箇所は何度聴いてもしびれます~以降もAb、Gb等にめまぐるしく転調していきますが、不自然さを全く感じさせないアレンジはさすがデビフォス!

元々はデヴィッド・フォスター&ジェイ・グレイドン、シカゴのビル・チャンプリンの作曲によるものですが、個人的にはデビフォスの曲の中ではこれがやっぱり一番だなあ・・・これまた永遠の名作ですね。

J-POP風コード進行

唐突ですが某有名曲のコード進行を打ち込んでみました。

試聴 [file:shimamura-music:130116-MIMIC_16_tenchou_03.mp3:sound]

コード進行

各コードの機能を説明します(軽く眺めるだけで結構です)

注目して欲しいのはGm7-C7のとこでして、キーがCだとトニックはCメジャーコード、セブンスでは無いハズ。

しかし、サブドミナントの「Fくん」の立場なってみると、Cは5度上、すなわちドミナントなわけです。ということでここでは一時的にFに転調していると考えられます。キーFのII-Vは「Gm7-C7」というわけ。

その後肝心の「Fくん」が現れないので少々もどかしいですが、ここはスルー・・・・・

「ドミナントモーション」でも説明しましたが、着地点の目標コードの前に「目標コードの」V7、それを発展させて IIm7-V7 という進行を持ってくる方法は非常に多く使われます。

なお、Fm6にはAb音が含まれますが、これは前回の「素顔のままで」でも説明した「サブドミナントマイナー・コード」というもので、「わー転調だー転調だーっ」と大騒ぎするほどの必要は無いのでご安心ください。

なお上記のコード進行は非常に多くの類似型が存在しますので、きっと皆さんもいたるところで耳にしていることでしょう。

参考:非常によくあるコード進行

これはまさに王道ですね

Just a two of us / Grover Washington Jr.
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この曲(キーFm : フラット4コ)の基本コード進行は

DbMaj7 C7 Fm7 Ebm7- Ab7  

コードの機能を表すローマ数字表記だと

bIVmaj7 - V7- Im7 -bVIIm7-bIII7

Ebm7- Ab7のところ、ここだけ「おやっ?」と思ったあなたはスルドイ。

別に何も思わなかった方・・・はおそらく最近の曲をよく聞いている方だと思います・・・それだけこの進行は多くの曲で多用されていますから、普通に感じたとしてもまったく不思議ではありません。

実はEbm7- Ab7の部分は一瞬Db(フラット5コ)に転調していると解釈してよいでしょう。もしソロを弾く場合はこの部分だけは「ソ」を「ソb」にするとハマり(音を外さない)ます。

最後に

ということで、色々と転調のパターンをご紹介いたしましたが、大事なことは

「転調、テンション等を多用すればかっこいい」は大間違い。

転調はあくまで技術の一つ。大切なのはやはりセンスじゃないかなあと思うわけです。

ただ、技術的に知ると知らないでは大違いなわけで、皆さんもいろいろな音楽を「耳コピ」することでエッセンスを吸収していただきたいと思います。


というわけで「耳コピ」連載はひとまず今回で終了。このコーナーが始まったのは2011年7月。月1本以上のペースで一年続くとは思いませんでした。これまでお付き合い頂きました皆様、誠にありがとうございました。今後はまた新たな記事でお会いしたいと思います。

それではひとまずさようなら~

おまけ1

毎小節ごとにキーが変わる恐ろしい曲
Giant Steps / John Coltrane
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1コーラス16小節中、B,Eb,Gという長三度のインターバルで転調が10回行われ、BPM=280というアップテンポの難局。しかし今では大学生もコンサートで演奏するらしいです・・・世の中変わりました。

おまけ2

Mozart / Ave Verum Corpus (K618) / Leonard Bernstein指揮
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有名なモーツアルトの賛美歌ですが、転調が絶妙すぎて「え?いつ変わったの」って感じです、ただただ美しいですアーメン。

おまけ3

ベンジャミン・ザンダーの「音楽と情熱」
ショパンの前奏曲をネタにした爆笑プレゼン・・と思っていたら感動のラストが・・・・必見!


補足:
※世には民族音楽をはじめ膨大な種類の音楽が存在しておりまして、「調性の無い音楽」はもとより、それこそ武満徹氏のおっしゃられるように「世界の音楽の中で音符(記譜)というものをもっている音楽は、ごくわずか」らしいですね。

なので調性とか機能和声はあくまで西洋音楽の中でのきまりごと・・ということは常にどこか頭の隅においておくと良いのかもしれませんね。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第15回 耳コピテスト「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」と「First Circle」

こんにちはサカウエです。

前回のインタープレイでひとまずリズムの話はひとやすみ。

皆さん!突然ですが、今日は耳コピ抜き打ちテストです!

楽器以外はしまっていただき、スマホ&携帯は電源をお切りください。

さて、これまで耳コピに役立つ機材やコード、テンション、リズムについてお話して参りましたが、今回はその知識を総動員してチャレンジしていただきたいと思います。

面倒くさいなあ〜という方は、解説を読んでいただければ、もしかしたらそのうち何かの役に立つかもしれません。ではなにとぞよろしくお願い申し上げます。

では

第一問(10点)

以下の曲のキーとコード進行を記し、なぜ「胸キュン」となるか理由を述べよ。
(イントロとAメロは同じコード進行です)

Christopher Cross - Arthur's Theme (Best That You Can Do)

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ライブ版はこちら(ギターのポジション見てもコピーできるかと)

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サビで「あ、この曲、聞いたことある!」という方も多いと思いますが、小田和正氏も真っ青なハイトーン。人を見た目で判断してはいけないのです、名曲です。

この曲は映画「ミスター・アーサー(Arthur)」の主題歌で、邦題は「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」。唐突ですが「Theme」の英語発音は本当は「シーム」です。豆知識です。

感動的なサビの部分・・・

“ When you get caught between the moon and New York City “
「月とNYCに囚われてしまったら(中略)恋に落ちるべきだよ(ベタ訳)」

・・ですが、かの小椋佳氏はこう表現されております。

「月のひかりと君とNew York City、奇跡だね愛は・・・」(できればリバーブ深めでお願いします)

まさかの倒置法。さすがです。
関係無いですが、かの夏目漱石「I love you ⇒ 月が綺麗ですね」を思い出し、ワタクシ思わず目頭押さえました(※出典には諸説あり)。

で、コード耳コピいかがでしたでしょうか?

正解はこちら(ボイシングは実際の演奏とは異なります)。

簡易バージョンを弾いてみます

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キーボードLine6さんのMOBILE KEYS46使用させていただきました。

この曲のキーはシャープが3つの「Aメジャー」ですね。

いきなりAのサブドミナント・マイナー(Dm)ではじまり、G-C-F-Bb-Eと絶妙な4度進行でトニックのAに戻ってきます・・う、うまいです。

なお「サブドミナント・マイナー」⇒「トニック」進行は、(気分にもよりますが)少々センチな印象をあたえます。これと4度進行が「胸キュン」現象の主要因といえるでしょう。

4度進行とメロディーの特徴

実はこの曲は以前紹介した、「メロディーが、コードの3rdを中心に構成されている、4度進行の曲」でもあるのです。
ルートと3rdを中心に抜き出すとこんな感じです。

再生する [file:shimamura-music:120828-Arthur.mp3:sound]


最低限の音でコード機能が成立していることがお分かりいただけると思います。

興味ある方は下記リンクもお読みいただければ幸いです。

サビのコード進行について

サビは明るい「D」メジャーコードですね。感動的です。そしてDのペダルポイントのままコードはA-EときてAへ帰ります。

Aメロはマイナーだったけど、ここではメジャー。これがポイントですね。

出だしのサブドミナントDマイナーの「胸キュン」が、サビでDメジャーになり、秘めていた感情が一挙に開放されるという感じかなあと。この対比が、この曲の素晴らしいところではないかと思います。あーほんといい曲だ。


さて続いて

第二問(90点)

次の曲のイントロの手拍子を耳コピし、気づいたことを述べてください。
(ヒント:頭から2分あたりまでは拍子パターンは変わりません)

First Circle / Pat Metheny Group

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スタジオライブ版

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またメセニー様かというご指摘まことにありがとうございます、でもメセニー様はホントお勉強ネタの宝庫なんでどうかお許しください。第二問の配点が多いのはお気になさぬよう。

・・でもホントまじめな話、これだけ古今東西の音楽を吸収、昇華し続け、でもあくまで主体はインプロビゼーション。しかし商業的にも成功している・・というジャズ・アーティストは稀有だと思います。

この曲はエモーショナルで、ダイナミックレンジの広い演奏が特徴ですね。「同期モノ」というのが全く信じられないですが、テンポはずーっと変わらずBPM=160。ライブだと、シンセのメロや後半のアルコ・ストリングスが打ち込みというのがよくわかります。ピアノソロ最高です。

さて正解です。

手拍子は、4分の11拍子(6/4+5/4)もしくは8分の22拍子。
メロと手拍子はパラディドルの関係。

「???」の方ももうしばらくお付き合いください。

正解見ちゃうと「ふーん」で終わっちゃうんですが、昔これをはじめて聞いて耳コピしたときは悩みましたね。

6拍子と5拍子の組み合わせというのはわかったんですが、問題は譜割り。最初はこう思いました

でピアノが入ってくるところがウラかと。でも後半どうもしっくりいかない・・・で、しばらく耳コピしているうちにやっと気づきました、

「実はこれウラ始まりじゃあ???」

で、譜面書きなおしていくとすべてが腑に落ちました。「おーコレが正解」

|ウタタンタンタタウタウタ|ウタタンタタウタウタ|

なおここでは「6/4+5/4」と表記しておりますが、これは「12/8+10/8=22/8」でもOK。パットは後者で表記しているみたいですね。

「メロと手拍子はパラディドル」というのは、メインのテーマのリズムと手拍子が

|○××○×○××○×○×|○××○××○×○×|
|RLLRLRLLRLRL|RLLRLLRLRL|

R(○)がテーマのリズム、L(×)が手拍子、という関係になっているという意味です。

実演してみました(左手がハンドクラップ、右手がピアノ)

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いかがでしょう?まさに「王様のアイデア」といえるでしょう(古いなあ)。そういえばベートーベンの「運命」も「ウ・ダダダターン」のウラ始まりでしたね。

ところで、昔のメセニー・グループのライブでは、このFirst Circleのイントロの手拍子は観客も一緒に行うのがお約束となっていました。冷静に考えるとちょっとあやしい世界です。

いつぞやの日本公演では、この変拍子を観客とステージが完璧シンクロ。パットが演奏後に「エクサレント!今日のお客さんの手拍子は今までで一番スゴイ」と絶賛しておりました。

世界各地で同じ事言っているのではないと信じたいと思います。


※パラディドルは下記を参照してください。

スティーブ・ライヒの影響

ところでメセニー様はミニマル・ミュージックの大家Steve Reich(スティーブ・ライヒ)に大きな影響を受けております。この曲にはその片鱗が現れている感じもしますね。

Steve Reich(スティーブ・ライヒ)って?

Steve Reich  Clapping Music

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Steve Reich - Tehillim (これが一番近い気も・・・)

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Steve Reich - Electric Conuterpoint (w / Pat Metheny)

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いかがでしたでしょうか?残念ながら今回80点以下だった方の追試はありません、これまでの記事をまたお読みいただければ幸いです。

というわけで抜き打ちテストは今後も続きます。ではまたお会いしましょう。

関連情報・参考CDなど

Very Best / Christopher Cross

Very Best of Christopher Cross

Very Best of Christopher Cross

「風立ちぬ」「セイリング」「オール・ライト」といったヒット曲めじろ押し。” Arthur's Theme ”は1981年の映画「ミスター・アーサー(Arthur)」の主題歌。主演のダドリー・ムーアはピアニストとしても有名です。
アカデミー歌曲賞をバート・バカラック、キャロル・ベイヤー・セイガー、ピーター・アレンとともに受賞しました。

Dudley Moore - A Gershwin Medley

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Pat Metheny Group / First Circle

ファースト・サークル

ファースト・サークル

  • アーティスト: パット・メセニー・グループ,ペドロ・アズナール,パット・メセニー,ライル・メイズ,スティーヴ・ロドビー,ポール・ワーティコ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2011/06/22
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る

メセニーファンならずとも必携の一枚。アルバム1曲目の「Forward March」は下手くそ学生ブラバンのパロディー(?)なので、ここでこのアルバムを拒否してはいけません。
first circleでのメセニーのソロは皆無。ひたすらアコギの書き譜アルペジオ、後半は鬼気迫る16分のストローク。この曲に対するメセニーの気概と決意を感じます。ライル・メイズのピアノ・ソロはベストテイクだと思います。何度聴いてもイントロからラストの「ジャン!」に至るまでの高揚感は筆舌しがたいです。
タイトルは、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの著書「煉獄のなかで(in the first circle)」にちなんだものかどうかは不明。

このライブ・オープニングはびっくりですよね。

Pat Metheny Group - Forward March - 1985
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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第14回 変拍子などのリズムについて その3

こんにちはサカウエです。連日の極暑ですがなにとぞ皆様ご自愛ください。

さて前回は「錯覚を起こさせるようなリズム・アレンジ」ということで「メトリック・モジュレーション」等をご紹介いたしました。今回は耳コピの難関、インタープレイで生まれるトリッキーなフレーズを紹介します。

ポリリズム的アプローチ

まずは前回のおさらいから。ちょっとひねったアレンジ。

知っている人は知っている「叙情派プログレ(すごいネーミング)」の「キャメル」。
Camel - Skylines -1:40付近のシンセソロに注目してください。

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えー少々演奏は少々粗いですがとても懐かしいサウンド、今じゃあ考えられない楽曲構成ですが・・・

さて、この曲は三拍子なんですが、シンセのアドリブソロ部分は(ワザと)4拍系のフレーズになっておりまして、その「ズレ」の妙といいますか、そこが面白いところです。

・・といってもなんだかよくわからないと思いますので、フレーズを3/4と4/4表記で、続けて打ち込んでみました(フレーズはスタジオバージョンです)

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このようにリズム隊は3拍子で8小節=合計24拍、シンセ・ソロは4拍子フレーズで6小節=合計24拍

合計はどちらも24になるので帳尻は合うわけです。

こうしたポリリズム的なアプローチはこの時代(1970年代)は結構多いですね。「YES」なんかも似たようなことやってましたが、調子に乗ってアドリブしていると頭を見失いますので、集中力の持続が求められますハイ。

で、次にご紹介する「インタープレイ」は上記のような「事前の決め事」ではなく、メンバー間で「即興的に行われる」やり取り・・いうなれば「本番真剣勝負」ということになります。

インタープレイとは?

はてなキーワードによれば、

ジャムセッションやインプロビゼーション→アドリブに比重を置く音楽ではもちろん、全ての楽曲に存在する必要不可欠な要素。

インタープレイとは 音楽の人気・最新記事を集めました - はてな

ということですが、よく似たものに「コール・アンド・レポンス」というのがあります。

もともと宗教音楽や民族音楽が発祥なんですが、これは呼びかけに後者が応答する形でフレーズを継承し演奏または歌唱する楽式のことです。

下記の動画はジャズにおけるコール・アンド・レポンス。これは非常にわかりやすいデモですね

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基本はモノマネ。似たフレーズの応酬ですが、楽器が変われば表現方法も自ずと変わります。その結果、音楽的にどんどん発展していくというわけですね。

で、コールアンドレポンスから昇華したものがインタープレイ。今度は単なるマネじゃありません。

なにしろ「お互いの音に反応し合い、高めあって全体を活性化させる音楽的会話」ですので着地点も未知の世界。

例を挙げます(ネタが古くて恐縮です)

Sting - The Lazarus Heart (3:00~のソプラノ・サックスソロに注目)

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周りをジャズ・ミュージシャンで固めたこのStingのアルバムはかっこいいですね。

さて3:00~からのリズムですが、拍を見失わないでカウントできましたか?

なんだかよくわからないという方のために、ベタ打ち込みしてみましたので参考にどうぞ(4つ打ちのカウントも入れておきました)。

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2小節目からリズムが複雑に変化していますね?
わずか4小節の短い時間、2小節目の部分では以下の様な無言のやりとりがおこなわれております(多分)。

1拍目:サックス「符点8分フレーズで決めたろー」

2-3拍目:ドラム「おっそうくる?じゃワシも合わせたる(キックとスネアを符点8分フレーズでズラし)」

4拍目:ベース「楽しそーじゃのーほなワイもいくでー、C7のベースライン適当に弾いたるでー」

関西弁(?)の記述は変だと自覚はしておりますのでお心遣いは無用です。とにかくこんな感じでメトリック・モジュレーション的なシカケが生まれているわけですね。

x:アクセント
小節
2:|x○○x|○○x○|○x○○|x○○x|
3:|○○x○|○x○○|x○○x|○○x○|
4:|○x○○|x○○x|○○x○|x○○○|

ただし、水を指すようで恐縮ですが、この箇所のキメは少々決まりすぎていてチョットあざとい印象を受けます。

おそらくは何度かリハーサルを重ねているうちに「ここはコレで行こう」みたいな事になったんじゃないかと思いますです(スティングのフレーズは2小節目頭から明らかに「準備してる感」がありますもんね)



さて、こうしたインタープレイによる「錯覚フレーズ」はジャズの世界では日常茶飯事。

三拍フレーズのドラムの煽りに執拗にベースが絡み、「こいついつまで続ける気かなあ」と思いつつ付いていくうちに「あー自分はいまどこにいるんだろー?」といった話はよくあります。

大学のジャズ研などでは、連日の先輩のこうしたスパルタ・リズムの洗礼を受けて皆成長していくのです。

スリリングなバッキング

ということで、コレ聞いてください。
CHICK COREA “humpty dumpty” 個人的にはチックのベスト・チューンです。

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各人のソロも凄いですが、サックスとベース・ソロにおける、チック(pf)とガッド(ds)のコンビネーションがとにかく凄まじいです。まるで事前に打ち合わせしていたかの如く「8分ウラ」のキメが決まっていますね。

リズムのアクセントが絶妙すぎて非常にスリリング。6分があっという間ですね。ずーっと4/4拍子なので、リズム・キープしているランニング・ベースを聴いて「1,2,3,4」とひたすら数えながら聴いてみてください(結構ロストするのではないかなあ)。

なおこの曲のコード進行は非常に変わっておりまして、頭からメジャーセブンスとマイナーセブンスの謎の平行移動。定番の「V7-I」というドミナント・モーションは最後に一回出てくるだけです。

したがってアドリブは滅茶苦茶ハード。

コード進行

冒頭のEb-Dは以前「タルカス」の解説に出てきたあの「4thビルド」で演奏されています。

コードは「EbM7(6,9)-DM7(6, 9)」なのですが、通常そこまで細かく表記するのは無粋(?)なので、余程のことがない限り単に「EbM7-DM7」のように表記するのが慣例となっています。

こうしたアップテンポの4ビートにおけるトリッキーなリズムを耳コピするのは、以前紹介した変拍子よりはるかにリズムに対する分析スキルが必要になると思います。

テンポを落として何度も聞いて、楽譜に記す修練を繰り返すのが良いと思います。

プロもたまにはミスることもある

というわけで世の中スゴい方々がいらっしゃるわけですが、実はプロの世界でも複雑なリズムバトルの末「今自分はどこ?」状態となり空中分解、最後は目で合図して帳尻合わせ・・ということもたまにあります。

あの(ハービー)ハンコック大先生でもブルースで「おーここ5拍になってるじゃん」ってのもあったし、人間誰しも間違いはあるものです。安心安心(ちょっと次元が違いますけどね)。

「音楽はハートだ!」というご意見はごもっとも。こうして分析するのは無粋なことかもしれませんが、たまにはこういった聴き方をしてみるのも、音楽の楽しみのひとつではないかないかと思います。

それではまた。

本日のオススメCD:ピアノとベースの絶妙なインタープレイ

Keith Jarrett / STANDARS LIVE
神次元の会話ですね。ゲイリー・ピーコック(bs)はすごいなあ。

星影のステラ

星影のステラ

  • アーティスト: キース・ジャレット・トリオ,キース・ジャレット,ゲイリー・ピーコック,ジャック・ディジョネット
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: CD
  • 購入: 1人 クリック: 1回
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Bill Evans / Explorations
ルート弾くだけがベースではないというお手本。カウンターラインのようなベースラインに注目

Explorations

Explorations

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第13回 変拍子などのリズムについて その2

こんにちはサカウエです。

前回は変拍子やタイムチェンジ(メトリック・モジュレーション)などのリズム関係のお話でしたが今回は続編です。

変拍子はそんなに強敵ではない?

耳コピ観点からですと、変拍子自体は実はそんなに強敵ではないと思います。

「ドンタンドンタン」といった2,4拍にスネアのバックビートが強調される一般的な曲と比較すれば、それは確かに演奏するのは難しいですが、テンポ下げてとにかく数えればよいのです。

あとは表記の問題で、いかに演奏しやすい表記にするかを考えればよろしいのではないかと思います。

たとえばこういうのはいろいろな表記ができそうですね。

男と女
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いやーやはり良いですなーフランシス・レイ。

さて出だしの「コームーノー」に続く歌詞を

voix badabada | dabadabada | Chantent tout

のように区切れば「3/4 – 3/4 – 4/4」という表記になりますね。

これがオリジナルのようですが、でも4-4-2でも表記可能です(合計10拍)。

前者が楽譜としては読みやすい気がしますが、いずれにせよ表記の問題です。

ところでナイショの話ですが、ワタクシ小学生の頃はこれ「(ダ)バダバダ−ダバダバダ」だと思っておりました.

しかし正しくは前述の歌詞でして「動詞+バダバダ」で以降、韻踏んでいくのですね。
(おフランス好きの方はいつか役に立つ日がくるかもしれない豆知識)

え、これ4/4なの?

耳コピで最も強敵なのは、4/4なんだけど、そうは聞こえないような複雑リズム、シカケだと思います。
拍頭がワカラナイ、カウントできない、といった前回もご紹介したカテゴリーですね。

ではいくつかかいつまんでご紹介いたしましょう。どれも基本4分の4拍子で変拍子ではありませんよ。

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これはハイテクドラマーDave Wecklの 「Tower of Inspiration」という超トリッキーな曲です(この動画の演奏は別人の「演奏してみた系」)。


Aセクションの部分は、まあなんとかカウントできるのですが、Bセクションはかなり強敵ですね。
普通はまず裏返って聞こえる・・・というか何がどうなっているのかこのスピードではよくわかりませんね。

正解はこちら

本人お手本(Aセクション)

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スネアが2,4拍で演奏されていないというだけで急に難易度上がりますね。
基本2小節のパターンですが4拍にスネアの強打が来るのは最後の1回だけです。

本人お手本(Bセクション)

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ここはテンポ落としてもカウントするのが相当難しいです。8分ウラ入から完全に裏返って聞こえますが、前回のツェッペリンなんてコレに比べればお遊戯みたいなものですな。

なおこの動画をご覧いただいてお分かりの通り、左手のスネアが16分音符で終始細かくビートを刻んでいますね。これは「ゴーストノート」といって通常スピードではおそらくほとんど聞こえない音です。

以前も書きましたが、こういった場合はスロー再生して耳コピするのが効果的ですね。下記記事を参考いただければ幸いです。

さてさて、なんだかドラム・マガジン的様相が漂って参りましたが次に行きましょう。

かつてDave Wecklを発掘したチックコリアのキメ・フレーズ

Samba song / Chick Corea (1:10過ぎに注目)
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1:10過ぎからの壮絶リズム・アレンジは、下記のように16分3つ取りとなっておりまして3拍でひとまとまりの形態です。

ソロ演奏中に口裏合わせたバック・メンバーにコレやられたらたまんないですね。一発撃沈です。

続いて「キメ」といったら前回も紹介しましたリー・リトナーのダイレクト・カッティング版。1:55過ぎのユニゾン運動会に注目してください(なんと一発録りですよ!)。

Lee Ritenour - Captain Fingers (Direct Cut Recording Ver.)
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「いったい譜割りどうなってるんかいな?」という壮絶ユニゾンでございます。

いかにもギタリストが作りそうなフレーズでして、キメの頭16分音符14個中、E音がなんと2オクターブに渡り3コあります。音の跳躍が半端ありませんので鍵盤で弾くのは激ムズ・フレーズです。

なおこの曲信じられないことに、16分音符単位の半端な変拍子はありません。基本は4/4!

・・・あーあのころは皆若かったんじゃよ。

次にプログレは変拍子ばかりじゃないよ、という例を御覧ください

The Only Thing She Needs – UK
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イントロのドラムは「奇数連」など多用しておりますが(とても親切なことに)バックにカウベルの4つ打ちが入っておりますので、テンポ落として聞けば意外に耳コピしやすいと思います(R-MIX最強)

・・が、よく聞いたら同じ演奏を2回重ねて録音していますね。恐るべしテリー・ボジオ先生!!

問題は5小節目以降ですね。一転して不親切。今度はカウントなしの16ビートのユニゾン・フレーズが出現します。

これカウント数えられる方はかなり凄いとおもいますよ。

ベースとオルガンのユニゾンをキープするだけでも大変なのに、なんと途中からまったく左手とは脈絡のない右手のコードワークが加わるという超難易度高いフレーズですね。

恐るべしエディー・ジョブソン先生


耳コピしてみました(音程は無視してください)

とまあ、複雑なリズム、キメは枚挙にいとまがないので今回はこれくらいにしておきます。

メトリック・モジュレーション(タイムチェンジ)とは?

かなりお疲れかと思いますので、最後にちょっとおもしろい「シカケ」をご紹介します(もっと疲れるかなあ・・)

それはメトリック・モジュレーション(タイムチェンジ)という、曲の拍を分割する単位を変えることで、その結果テンポを変えるという手法です。

えーワタクシ言葉ではうまく説明できませんので実演します。


あのプログレッシヴ・ロックの雄 Pink Floyd には、あるモチーフをメトリック・モジュレーションで変化させ、複数パートで構成した「Shine On You Crazy Diamond」という壮大な組曲があります。

長いので全部聴くのは時間のあるときにどうぞ(4:00のフレーズがモチーフ)。
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4:00辺りに出てくる「Bb-F-G-E」というギターのフレーズがこの曲の重要な鍵です。

Gm7(6)というコードですけれども、この組曲ではこのモチーフから派生したフレーズがいろいろなリズムで演奏されていきます。

というわけでその部分だけを抜き出して実演してみました。

Pink Floyd Shine On You Crazy Diamondギターのアルペジオをシンセで弾いてみました。
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いかがでしょう?音列を何音符として切り出すかでリズムとテンポが変わるわけです。

単に雰囲気でテンポ・チェンジするのではなく、音符の切り取り方に基づいてビートを決めるという手法がメトリック・モジュレーションです。

アドリブへの応用など、他にも色々なネタがありますがこれらについてはまた次回以降ご紹介します。


というわけで今回も長くなってしまいすみません。次回はインタープレイ等のさらに奥深い世界へ足を踏み入れて見ようかとおもいます。

それではまたお会いしましょう。

参考CD

Master Plan

ドラマーのリーダー作らしく、ありとあらゆるリズムのギミックを堪能できます。2曲目は6連シャッフルの4つ取りで16ビートになったり戻ったり、というすごいメトリック・モジュレーションやってます。

Master Plan

Master Plan

Pink Floyd 炎 あなたがここにいてほしい

炎 あなたがここにいてほしい

炎 あなたがここにいてほしい

U.K. Danger Money

Danger Money

Danger Money

Chick Corea  / Friends

Friends

Friends

スティーブ・ガッドがいなかったらこのアルバムは作れなかったでしょうね。名盤です。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第12回 変拍子などのリズムについて その1

こんにちはサカウエです。

前回、前々回と耳コピ難易度の高いテンションや4度和音、sus4などをご紹介いたしました。
今回からはちょっと視線を変えて、リズム関連のお話をしてみたいと思います。今回は予告編という感じですね、多分次回に続くと思います。

トリッキーなリズム

これを聞いてみてください(リズムをカウントしながらお願いします)。


Led Zeppelin/ Rock and Roll
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ドラムソロの後のギターリフが始まるところで「あれっ」て思った人、ハイ正直に手を上げてみましょう。

多くの方が2拍ずれたり、ウラ返って拍頭を見失ったんじゃないかと思います(ワタクシも)。

では次にこれにカウントを入れて再現してみましたので(親切でしょ?)
聞いてみてください。。

[file:shimamura-music:120410-countRR01.mp3:sound]

いかがですか?今度は数がちゃんと合ったと思います。
さてこれを記譜すると;

実はこのフレーズは変拍子ではなく普通の4/4なんですね。

最初の一拍半(8分音符3つ)が曲者でして、実際は三拍目のウラ始まりなんですが、これがなぜか頭拍に聞こえちゃいます。スネアが二拍四拍打ちじゃないからなおさらなんですね。

なおこうした有名曲の場合は何度も繰り返し聴んで覚えてますから、譜面を見てもなかなか正しいフレーズには聞こえて来ないものですね(泣)

耳コピの強敵:複雑なリズム

さて、テンションが入った複雑な和声と同様、複雑なリズムの曲というのはやはり耳コピの強敵なわけです。
耳コピ歴35年(だったかな?)のワタクシがこれまで対決してきた強敵リズム曲を大別してみると、以下の三種類になるかと思います。

  • 変拍子系:「16分の19拍子(ちょっと極端ですが)」みたいに拍を数えるのがチョット大変な曲。
  • メトリック・モジュレーション(タイムチェンジ)系:ポリリズム的な曲(Perfumeとはチョット違います)
  • トリック系(かっこいいネーミング募集中):スリップ・ビート等、どこが拍頭か分からない意地悪な曲。

二番目のメトリック・モジュレーション系はこんな感じですね。

メトリック・モジュレーション(16ビートから三連系へチェンジ)
Third Wind - PAT METHENY GROUP - Live '92 Japan 5分8秒から
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(ワタクシこのとき観客でした)


先ほどのツッペリンはやや三番目のトリック系。なおスリップ・ビートのすごいやつにはこんなのがあります。
Vinnie Colaiuta / I'm Tweeked / Attack of the 20 Lb Pizza
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テーマの繰り返しの0:34あたりから徐々に16分ズレのくり返し・・・ここまで来るともはや宇宙人。もう分けわかんないですね。


えーと、この時点ですでに「???」となっている方もいらっしゃると思いますが、心配ご無用。
これからワタクシがちゃんと説明しますのでご安心ください。

手ごわいリズムにどう立ち向かうか?

以前紹介したEL&Pの「タルカス」は5拍子でしたが、こうした厄介な曲はやはりジャズ、フュージョン、プログレ系に多いです。J-Popでこれやるとまずウケません。演歌は意外とあったりします。

さて、こうした難曲を予備知識もなく耳コピするのは、りゅうおう(竜王)に「ひのきのぼう」だけで挑むがごとき行為であります。普通はあっという間に叩きのめされます、リセットボタンです(古)。

したがって、ボスキャラに立ち向かうためには、やはりそれ相応の経験値とゴールド、武器・防具、耳コピの場合はこれからご紹介するようなウンチク等が必要になるでしょう。攻略本も必要です。

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© Square Enix Co., Ltd.

それでは以降、これらの三大強敵の特徴と、耳コピ攻略法をご紹介してまいりたいと思います。

変拍子とは?

ではファースト・ステージのボスキャラ、「変拍子」から。

西洋音楽の基本は通常、二拍子(2/2,2/4など)、三拍子(3/4、3/8など)、四拍子(4/4など)ですね。

変拍子というのは変な拍子ではなく正しくは「複合拍子」ということで、一般的にはいろいろな拍子が連続する場合を称しているようです。まあへんてこな拍子だから変拍子でもよいです。

ちなみに「三三七拍子」ってありますよね、

[file:shimamura-music:120410-337.mp3:sound]

これ名前は立派に複合拍子のような感じですが、実際には

と休符が入っています。なんだフツーに四分の四拍子、ただのスライムです。

正しい「三三七拍子」はこうなります(小節頭にはアクセントをつけました)。

[file:shimamura-music:120410-T337.mp3:sound]

ドラキーくらいになったと思いますが、あまり応援には向いていないと思います。

とりあえず変拍子を聴いてみよう

Bruford / Hell's Bells
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19/16ですが非常にポップ(?)に感じますね。4分音符4つ(合計16コ)に16分3つのフレーズがはみ出ている譜割なので案外難しくないと思います。


Lee Ritenour / Sea Dance
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70年代ふゅーじょん血が騒ぐぜ・・・。7/8拍子のイントロとテーマ。サビは4/4で後半は6/8、9/8とかいろいろ出てきます。ぜひ数えてみてくださいw

なおこのアルバムは「ダイレクト・カッティング*1」という若い方には(???)な録音方法が採用されています。

この曲のイントロは前にも紹介したSus4コードを使っています。
0:13〜のリフはなんだか難しい感じに聞こえますが、実は下記のようなsus4コードの平行移動なんです。

トップノートはコンビネーション・オブ・ディミニッシュ(略してコンディミ、今度お話しします)スケール上で動いているというシカケになっています。

Bメロは4/4。典型的な4度進行です。

Em7- Am7 | D7 - GM7/Db9 | CM7 - F#m7(b5) | B7 - Em7 |


Genesis - Firth Of Fifth
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イントロと4:30からのフレーズに注目
シンセの16部音符フレーズにあわせた譜割りになっていますので、これも比較的覚えやすいと思います。逆に覚えてないと演奏するのはほぼ無理でしょうね。

表記の都合の場合もある

楽譜は「演奏者に理解されやすい」という観点で表記しなくてはなりません。ですから楽譜の便宜上、あえて変拍子表記にする場合もあります。

たとえば4/4が二小節あったとして四分音符は合計8個ですが、理解されやすさを優先した場合、フレーズによっては

3/4+5/4
2/4+3/4+2/4

といった表記でもよいわけです。とまあどこで区切るかは極論で言うと作曲者の自由。非常に恣意的なわけです。

ストラビンスキー「春の祭典」の終曲は、指揮者泣かせの変拍子オンパレードで有名ですね。

Stravinsky - The rite of spring - Sacrificial Dance
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3/16 - 2/16 - 3/16 - 2/8 ・・・・

みたいな感じで延々続きます。でもこれ本来バレエ曲ですから、ダンサーさんも大変ですね(おそらく拍は厳密に数えてないだろうなあ)

振り付けニジンスキー版
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こうした複雑なビートの曲を、複数の人が耳コピした場合(しないと思うけど・・・)記譜は人それぞれに異なることになるでしょう。

ある人は「7/8+9/8+4/4」と採譜するかもしれないし、ある人は「4/8+3/8+4/4+1/8」と記すかもしれません(数あってるか心配)。

トータル拍数が合っているのであれば、どちらが正しいかはわかりません。どのように作曲者が書いたか?は別問題です。

最後に

変拍子はメロディーとかフレーズ歌っていたら自然に変拍子になっていたという自然な感じがいいですね〜。
「7拍子の曲を作るぞー」と力んで作った曲は、あざとい感じになってしまいます。必然性が感じられないからですね。

というわけでというわけで今回はここまで。続きはまた次回以降となりました。
数字が苦手な方(ワタクシもですが、、)ご清聴いただきましてまことにありがとうございました。

それではまた

参考CD

Selling England By the Pound

Selling England By the Pound

変拍子のほか、メトリック・モジュレーションも多用されています。でも曲が良い!コレ重要。名盤です。


One of a Kind

One of a Kind

以前紹介したHatfield and The North のDave Stewartがキーボードで参加。あくなきハーモニーの探求を堪能できる。


SGT.PEPPER'S LONELY HE

SGT.PEPPER'S LONELY HE

ジョン・レノンは変拍子多いです。

*1:アナログレコード時代、マイクで収録した演奏を直接レコードマスター盤の元になるラッカー盤に音溝を刻むという方法です。カッティングミスや、演奏に失敗したら片面全部最初からやり直し。

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