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ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれかわります」第11回「修理9 ネジ穴不具合・埋め木修理」

みなさんこんにちは。6回目の登場となります、調律師のハラキです。

さて第11回ピアノ再生物語、今回は修理9回目「ネジ穴不具合・埋め木修理」についてご紹介させていただきます。

ネジ穴不具合とは?

調律師が作業をしていてよく出会うのが、このネジ穴の不具合です。
これは、ネジを回しても回しても止まることなく回り続けてしまう状態のことです。
皆さんの中にも工作や日曜大工をされる方は、この症状に出会ったことがあるのではないでしょうか?
こうした症状がどうして発生するのかといいますと、何らかの理由でネジ穴がネジの径よりも広くなってしまうためです。木材は素材が柔らかく形状が変化しやすいため、調整を何度も繰り返すうちにこのようなことが起きてしまうのです。

ネジの数

そもそもピアノにはいったいいくつのネジが使われているのでしょうか?
メーカーや機種によっても様々ですが、およそ数百個にも及びます。例えば丁番(屋根や譜面台を繋いでいる金属部分)にも多くのネジが付いています。
アップライトピアノの屋根を留めている長丁番だけで、ネジは42個あります(数が異なる機種もあります)。
鍵盤蓋(フタ)の長丁番と合わせると、それだけでネジの数84個!

ネジの種類も数知れず・・・

これはほんの1部ですが、金色のものは丁番用のネジです。

外から見えるネジだけでも数多く使われていることがわかります。しかしピアノの内部やアクションにはもっともっとたくさん使われています。

例えばアクションに使われているネジ(スクリュー)は、ひとつの音に対してだけでも、

  • バットプレートスクリュー
  • ダンパーソケットスクリュー
  • ジャックストップレールスクリュー
  • レギュレティングスクリュー
  • バットフレンジスクリュー
  • ダンパーフレンジスクリュー
  • ウイッペンフレンジスクリューと……

これを88鍵分なので‥‥もはやネジだらけですね!

埋め木とは?

この症状を直す方法は、いくつかあります。その中のひとつが「埋め木」という作業です。
広がってしまったネジ穴に細くて柔らかい木材を埋めて穴を塞いでしまいます。あとは何事もなかったようにネジを締めていくだけ。穴の隙間は埋まっているので、ネジをしっかりと締める事ができるという訳です。

修理

では、埋め木修理をしていきます。今回はアップライトピアノの屋根にある長丁番のネジ穴不具合の修理です。
不具合を見つけたら、1度ネジを外します。

広がったネジ穴に細く柔らかい木材を入れて、はみ出ないところでカットし埋め木処理をします。

その上からネジを締めます。曲がったりしないように慎重に真っ直ぐ回して留めます。


これで修理完了です。
「埋め木」は他の修理のときにも応用できる修理方法です。そのため調律師は常に木材・木片を持ち歩いていますよ。

また、丁番のネジは細いため、ネジが中で折れてしまうこともあります。ガーン。
中で折れた小さな欠片を取り出すことは難しいのです。このような場合は、上から穴を開け直す方法を取ります。

おしまい

ピアノには数百個という実にたくさんのネジを使用していることがお判りいただけたかと思います。
この内ひとつでも緩んでいると、音が上手く出なかったり、弾いたときにジーンという雑音が生じたりすることがあります。
緩みをなくし、不具合を直すことはとても重要なのです。調律師のドライバー使用率・・・高いです。

次回の第12回ピアノ再生物語は、ハラキに代わって調律師カワイが修理10回「ダンパーフェルト交換」についてご紹介させていただきます。

ダンパーの仕組みがわかります。
では、また(・ω・)

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