島村楽器公式ブログ

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ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれかわります」第14回「整調2 ネジ締め・鍵盤整調・ピン磨き」

みなさんこんにちは♪島村楽器ピアノセレクションセンター ピアノ調律師のカワイです。
この連載は今回で14回目となります!

ピアノ修理の紹介が終了し、前回の調律師ハラキの記事より整調の紹介に移らせていただきました。
整調は見た目とても地味な作業ですが、これによりピアノの性格がガラッと変わるといっても過言でないくらい重要な作業です。
工程ごとに紹介していきますので、ピアノが弾きやすい状態になるまでに技術者がどんな作業をしているのかをぜひご覧ください♪

本題へ入る前に、整調をする上での重要なキーワードがございます。
それは「ピアノは呼吸している」という事です。
以前湿度とピアノの関係をご紹介しました通り、「湿気が多いと木は膨らみ、乾燥すると木は痩せる」という性質を持っているので、ピアノは環境によって変化します。
よって技術者はピアノが置いてある環境によって整調も少しずつピアノに合わせて変えています。まずは基準値に合わせていくことが重要ですが、そこから応用してそのピアノ1台だけの整調を行なう事がもっと重要になるのです。
「ピアノは呼吸している」というキーワードをぜひ頭の片隅に置いてご覧ください♪

ネジ締め

整調はまずアクションを取り出してネジ締めの作業から始まります。
調律にお伺いしたお客様にピアノの内部を紹介すると、どのお客様も「ピアノって木で出来ているイメージしかなかったけど、こんなにネジがあるのね」というコメントをよく頂きます。
実はピアノ内部にはたくさんのネジが隠れており、それらは部品をしっかり固定しアクションが正常に動く為に無くてはならない存在です。
湿気が多いと木は膨らみ、乾燥すると木は痩せるという性質から、木の変化によってネジは自然と緩んできてしまいます。
ネジが緩むと場所によって様々な不具合が起きてしまうので、最初の点検がとても大切です。
外装のネジも緩んでいると雑音や反響の原因になるので同時にチェックしていきます。

鍵盤調整

続いて皆さんが一番多く触れる鍵盤の調整です。まずはピアノ内部の鍵盤の写真をご覧下さい。


あっ!鍵盤がはずれましたね!
このように鍵盤には穴が開いており、ピンに刺さってテコの原理で動いております。
「ピアノは呼吸している」関係でこの小さな穴がよく変化してしまうのです!!
湿気により木が膨張すると穴が小さくなり鍵盤の動きが鈍くなります。
それが進行していくと、鍵盤を押しても下がったまま上ってこない(元に戻らない)!というような症状になります。

それでは実際に鍵盤調整をしていきましょう。


使用する道具はこちらです♪
上から、かなづち・キープライヤー・バランスホールリーマーと呼びます。



上写真をご覧下さい。鍵盤には表と裏で一箇所ずつ、計二箇所の穴が空いております。
この鍵盤の穴には「ブッシングクロス」という赤いクロスが貼ってあり、これを先ほどの道具でつぶしたりして穴の大きさを変えて鍵盤の動きがスムーズになるように調整していきます。

道具の使い方





穴は大きすぎても鍵盤がグラグラと余分な動きをしてしまい、タッチが悪く音の強弱や細かいパッセージを弾く時に弾き心地が悪くなります。
鍵盤を上に上げてストンと落ちるその落ち方をそろえていく事で調整していきます。
ピアノの環境によってストンという落ち具合をうまく調整して弾く人が気持ちよく演奏できる状態に持っていくのが技術者の腕の見せ所です♪
このような流れで一鍵ずつ丁寧に調整をしていきます。

ピン磨き

上写真をご覧下さい。鍵盤調整をしている中で、鍵盤の穴ではなく、差し込むピンが錆びて変色してしまっていますね。
ピンが錆びてしまっていても鍵盤の動きに支障が出ますので、それを綺麗に磨いていくのがピン磨きの作業です。
地味な作業ですがしっかり磨くと表面がツルツルになり、鍵盤の動きも滑らかでとても弾きやすくなります。

以上が鍵盤調整の手順でした♪動画も良かったらご覧下さい♪

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音合わせだけでなく、調整をする事でタッチを良くすることも技術者の大切な役割の一つです。
御興味のある方はぜひ島村楽器ピアノセレクションセンターまでお問い合わせ下さい♪

次回は、私カワイに代わりまして、調律師ハラキが「打距離・ハンマー調整・ウィペン調整」についてご紹介致します!お楽しみに♪

島村楽器ピアノセレクションセンターについて

ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。

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