島村楽器公式ブログ

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初公開!バッドキャットUSAの本社に潜入してみました!:後編 生産ライン潜入

皆さんこんにちは・・・
島村楽器バッドキャット(Bad Cat)担当のカンノです。

前回に続いて「今まで明かされることの無かったバッドキャットUSA本社」を紹介していこうと思います。
前回の記事を読んでから今回の記事を読むとより楽しめます。

さて、、、いよいよといいますか、イキナリといいますか、バッドキャットUSAの核心に迫りたいと思います。
ここは、バッドキャットの肝ともいえるポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリング(配線)の工程です。

ポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリング




電気特性に優れたテフロン銀メッキケーブルによるポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリングは熟練した工員でも1台あたり配線に10時間以上を要します。なぜ一瞬で半田付けが終わるプリント基板ではなく10時間以上もかけてハンドワイヤリングを行うのかは、実は音響的に多大なメリットがあるからです。

ポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリングのメリットとは

  1. 立体配線ができること。プリント基板のような平面配線ではなく、立体配線できるため配線経路が短くなる。
  2. 次に銅の薄いシートに信号を通すプリント基板と比較して、配線材の断面積が格段に太くなるため、電気信号が削られにくい。

このことによりプリント基板と比較し音質劣化が格段に少なくなります。

これが実際の音色・音質では

  • 格段に音圧が高く、ダイレクトで生々しい音質になります。
  • ミドル落ち、ハイ落ちが少ない明るい音色になります。
  • アンプから発生するノイズが格段に減ります。
    • 一度削られてしまった音を回路的に無理やりブーストさせるなどの無理な回路処理が必要なくなるため)

以上の多大なメリットがあります。

このようにメリットだらけのハンドワイヤリングですが、弱点として配線に多大な時間がかかってしまうため、どうしてもコストに反映され価格は高額になってしまいます。市場でもハンドワイヤリングのアンプは高額です。またハンドワイヤリングは技術的に熟練していないと、イモ半田などを作ってしまい逆にノイズの原因になってしまうので、熟練した技術力が必要になります。配線に10時間以上かかるアンプを大量生産することはできません。バッドキャットは思想的に大量生産とは全く逆の「少量生産」、「最高品質」の真のブティックアンプと言えます。

キャビネット製作



頑丈な13プライのバルティックバーチ材によるキャビネット にトーレックスを貼っています。ギターアンプのみならず高級スピーカーキャビネットによく使われるバルティックバーチ材は非常にバランスの取れた音質を生み出します。
(オーディオ高級機では、音響工学に基づき緻密に設計された8層以上からなる合板キャビネットが使われることが多いです。使用される材としては、各種強度や耐朽性、音響バランスに優れるバーチ材がよく使われています)これにより耐久性と共に優れた音響特性を生んでいます。

スピーカー取り付け

バッドキャットのみに使われるカスタムメイドのセレッションスピーカーの取り付け。サウンドの秘密の一つにもなっているバッドキャットのカスタムオーダースピーカーでイギリス製セレッションスピーカーに別注を行っています。初期VOX、初期MARSHALLに搭載されたアルニコブルーの甘く抜ける高音域と、現代的なセラミックスピーカーのパンチとタイトな低音域を兼ね備えています。よくバッドキャットに関して言われている空間で鳴る透き通る音色、抜ける音だが耳に痛くない音色はこのスピーカーが大きく影響しています。このスピーカーがバッドキャットの回路設計はこのスピーカーの使用を想定して設定しているので、ヘッドを購入したお客様も最高のパフォーマンスの追及にはバッドキャットのスピーカーキャビネットに合わせていただくことを推奨します。

パネル類の削りだし




コントロールパネルやロゴパネルを削りだすエングレイバー。一般的なアンプはシルク印刷がほとんどですが、バッドキャットはコントロールやロゴパネルを削りだすことで立体的で質感のある仕上げを追求しています。それにより光るロゴパネルはステンドグラスのようなハンドメイドならではの質感を持ち、カッコよさと共にバッドキャットと直ぐにわかってもらえる特徴・ステイタス性を兼ね備えます。

パーツ紹介




大容量のハンドワウンド・トランスフォーマー、キャパシター、チョークなどパーツも厳選された最高品質のもののみ使用しています。これらパーツは安定と余裕だけでなく、抜ける低音、抜ける高音を生み出します。それによりフルレンジに優れたサウンドを生み出します。

その他のパーツに関しても

  • 真空管取り付けリングはショック耐性リングを採用し高い衝撃耐久性。
  • 最高級Bourns社製カスタムメイドのポッド類を採用。
  • 最高の伝導率と耐久性の実現のため金メッキ・コネクターを採用。

など全てにおいて厳選された最高級のパーツ類のみ使用し、最高の音質と同時に何十年にもわたって使えるだけの耐久性を追及しています。

コイル巻き



Unleashのコイルを巻く機械。このように重要なパーツは自社生産することで品質管理を徹底できるのも強みです

新製品CUBⅢの試奏もしてみました


最後に私カンノも新製品のCUB IIIを試させていただきました。初段のプリ管を12AX7⇔EF86に切り替えができ、またK-masterコントロールによりプリ管をサチュレーションさせることなく、単独でパワー管をドライブさせることができるかつて無い画期的な回路設計です。
一言で言うと格段に音の幅が広がりました。クリップさせることなくローボリュームからパワー管ならではの図太いクリーンサウンドが出てきます。更にプリ管のコンビネーションを加えると音色は無数になり、あらゆる場面、あらゆるギター、あらゆる音楽で最良の音質を追求できるアンプになっています。
CUBⅢは2014年7月発売予定となっています。

バッドキャットの「今と昔」(ちょっとマニア向けなお話)

マーク・サンプソン、ジェームス・ヘイドリック体制から、ジョン・トンプソン、ジョージ・クリメック、マイク・フランセチーニ、フレッド・コイナーの新体制に変わったバッドキャット。
単にマークサンプソンモデルの焼き直しで食べていくのではなく、基本思想とサウンドは受け継ぎつつも、意欲的で独創的なメンバーにより現在もラディカルにバッドキャットは変化を続けています。
製品的な大きな変化としてはエフェクトループをデフォルトで搭載、チャンネル切り替えもアンプ内部で行えるようになりました。
またマスターボリュームも追加しつつも、必要ない場合はバイパスできるようにし、Hot CatではクリーンCHでトーン切り替えが出来るようになるなど、過去の同モデルより格段に使いやすいアンプに生まれ変わっています。
それには65AMPを成功させたマイク・フランセチーニがアンプ回路のブラッシュアップに大きく貢献しています。
またジョン・トンプソンとジョージ・クリメックによりリアンプ/アッテネーターUnleash、K-masterコントロール、Siamese Driveなど未だかつて無い革新的な仕様・製品を次々と開発・発表しています。
もう一度活性化しだしたバッドキャットはUSAで現在再評価を受けており、私が訪れた、今年(2014年)のNAMMショーやUSA最大のギターショーのダラスギターショーなどでも良く目にすることができ人気が再燃していることを体感できました(下2014NAMMショー、2014ダラスギターショー画像)


最後に・・・クラスA回路にこだわり続けるバッドキャット

いかがでしたか?前回・今回の記事を見ていただくとわかるように、あらゆる点にこだわってアンプを作り上げているバッドキャットの魅力がお伝え出来ていれば嬉しいです。
クラスAは増幅回路に常に電流を流しながら増幅させる設計で歪みが小なく、ピュアオーディオ系で好まれる回路でギターアンプの場合はクリーントーンを得意とします。また弾いたら直ぐに音となるため音の立ち上がりが鋭いのがクラスA回路の特徴です。

クラスAアンプはピュアオーディオと同じようにワイヤリング、作り、素材の良し悪しが素直に音質に直結するため、ごまかしが一切きかないアンプです。
良い音の追求のため、そのワイヤリング、作り、素材の良し悪しに徹底的にこだわるバッドキャットの会社姿勢、各メンバーの熟練した技術、自分の仕事に対するプライドにあらためて感銘を受けました。本当に良い音を出したい方には、バッドキャットは一度試していただく価値があるアンプです。興味がありましたら是非一度島村楽器までお問い合わせください。

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